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「どんぶり勘定」から卒業する——Excelで飲食店経営を数値で管理する

飲食店経営で最も多い失敗パターンは「感覚経営」です。

  • 売上は上がっているのに手元にお金が残らない
  • 原価率が高いのはわかっているが、どのメニューが問題か把握できていない
  • シフト管理が手書きで、変更のたびに連絡が大変
  • 食材の発注量が毎回「なんとなく」で、廃棄が多い

これらは全て「数値管理の仕組み」を作ることで解決できます。高価な専用POSレジシステムを入れなくても、Excelを正しく使えば月10万円以上の無駄を見つけ出すことができます。

本記事では、小規模飲食店(〜10席程度)のオーナーが今すぐ使えるExcel管理テンプレートの設計方法を、数式付きで完全解説します。


なぜExcelか? 専用システムより優先される理由

飲食店向けの管理ツールは多数ありますが、小規模店舗でExcelが優れている理由があります。

  1. コストゼロ — Microsoft 365があれば追加費用なし。Google スプレッドシートなら完全無料
  2. 自由にカスタマイズ — 自分の店の業態に合わせて自由に設計できる
  3. 学習コストが低い — スタッフも慣れ親しんでいる
  4. データの一元管理 — 売上・原価・シフトを1ファイルで管理できる

テンプレート1:日次売上管理シート

シート構成

日次売上管理シートは「入力エリア」と「集計エリア」を明確に分けることがポイントです。

基本構成(列):

A列B列C列D列E列F列G列
日付曜日客数客単価売上合計目標売上達成率

主要数式

曜日の自動表示(B列):

=TEXT(A2,"aaa")

A列に日付を入力するだけで、「月」「火」「水」…と自動表示されます。

売上合計の計算(E列):

=C2*D2

客数×客単価で売上を自動計算。手計算の転記ミスがなくなります。

達成率(G列):

=IF(F2=0,"",E2/F2)

目標売上が入力されている場合のみ達成率を表示。ゼロ除算エラーを防ぎます。

条件付き書式:達成率が80%未満の場合にセルを赤くする

  • G列を選択 → 条件付き書式 → 新しいルール
  • 「数式を使用」→ =G2<0.8 → 塗りつぶし:赤

月次集計セクション

シートの下部に月次集計エリアを設けます。

月間売上合計:

=SUMIF(A:A,">="&DATE(2026,5,1),E:E)-SUMIF(A:A,">="&DATE(2026,6,1),E:E)

曜日別平均売上(AVERAGEIF使用):

=AVERAGEIF(B:B,"月",E:E)

「月曜の平均売上」「土曜の平均売上」を比較することで、曜日別の強弱が見えてきます。

週次推移グラフの作成:

  • A列〜E列を選択
  • 挿入 → 折れ線グラフ → 「マーカー付き折れ線」
  • 週ごとの売上トレンドが一目瞭然になります

テンプレート2:原価率管理シート(メニュー別)

原価率は飲食店経営の生命線です。**飲食店の適正原価率は30〜35%**とされています。これを超えているメニューは改善か廃盤が必要です。

原価率計算シートの設計

列構成:

A列B列C列D列E列F列G列
メニュー名販売価格(税抜)原材料費合計原価率目標原価率差異判定

主要数式

原価率の計算(D列):

=C2/B2

表示形式を「パーセンテージ」に設定すると自動で%表示になります。

目標との差異(F列):

=D2-E2

プラスなら原価率が目標を上回っている(問題あり)、マイナスなら良好。

判定の自動表示(G列):

=IF(D2<=0.3,"優良",IF(D2<=0.35,"適正",IF(D2<=0.4,"要注意","改善必須")))

条件付き書式でD列(原価率)を色分け:

  • 30%以下:青(優良)
  • 30〜35%:緑(適正)
  • 35〜40%:黄(要注意)
  • 40%超:赤(改善必須)

食材単価管理(原価計算の基礎)

各メニューの原材料費を正確に計算するために、「食材単価テーブル」を別シートに作成します。

食材単価テーブルの構成:

食材名 | 購入単位 | 購入金額 | 単位あたり金額 | 使用単位
豚バラ肉 | 1kg | 1,200円 | 1.2円/g | g
卵 | 10個 | 200円 | 20円/個 | 個
だし醤油 | 1L | 500円 | 0.5円/ml | ml

メニュー別原価計算(VLOOKUP使用):

=VLOOKUP(A2,食材テーブル!A:D,4,FALSE)*B2

A2に食材名、B2に使用量を入力すれば、食材テーブルから単価を自動参照して原価を計算します。


テンプレート3:シフト管理シート

シフト表の基本設計

シート構成(1ヶ月分):

縦軸:スタッフ名(行) 横軸:日付・曜日(列)

スタッフ名 | 1(月) | 2(火) | 3(水) | ... | 合計時間 | 合計人件費
Aさん     |  9-17  |  休    |  9-17  | ... |  160h   | 160,000円
Bさん     |  休    | 17-22  | 17-22  | ... |   80h   |  64,000円

勤務時間の自動計算

シフト入力を「開始時刻」「終了時刻」の2列に分けると計算が楽になります。

例:C列に開始時刻(9:00)、D列に終了時刻(17:00)を入力

実働時間(休憩1時間差し引き):

=IF(AND(C2<>"",D2<>""), (D2-C2)*24-1, 0)

時刻の差を時間単位に変換(×24)し、休憩1時間を差し引きます。

月間合計時間(スタッフ別):

=SUMIF(スタッフ列, "Aさん", 実働時間列)

月間人件費(スタッフ別):

=合計時間 * 時給

時給をスタッフマスターテーブルに持っておき、VLOOKUPで参照します。

人件費率の自動計算

=SUM(全スタッフの月間人件費) / 月間売上合計

**飲食店の適正人件費率は25〜35%**とされています。これを毎月確認することで「人を増やすべきか、シフトを削るべきか」の判断ができます。

シフト表の自動入力補助(ドロップダウン)

シフトの種類(「9-17」「12-21」「17-22」「休」など)をドロップダウンリストで選べるようにすると入力ミスが減ります。

設定方法:

  1. シフトパターン一覧を別シートに作成
  2. シフト入力セルを選択 → データ → データの入力規則
  3. 「リスト」を選択 → 元の値に別シートの範囲を指定

テンプレート4:食材発注管理シート

食材の廃棄ロスは飲食店経営の大きな課題です。Excelで発注管理を体系化することで廃棄率を下げられます。

発注管理シートの設計

列構成:

A列B列C列D列E列F列G列
食材名在庫数(現在)適正在庫数不足数発注単位発注数量発注金額

主要数式

不足数の計算(D列):

=MAX(0, C2-B2)

適正在庫を下回っている場合のみ不足数を表示。MAX(0,…)でマイナスになるのを防ぎます。

発注数量(発注単位を考慮)(F列):

=CEILING(D2, E2)

不足数を発注単位で切り上げます。例えば不足が7本で発注単位が5本の場合、10本を発注するよう自動計算。

発注金額(G列):

=F2 * VLOOKUP(A2, 食材単価テーブル!A:B, 2, FALSE)

発注が必要な食材のみを抽出(フィルター機能): D列(不足数)が1以上のものだけ表示するフィルターを設定。発注リストとして印刷・メールで活用できます。

週次消費量トラッキングで発注精度を上げる

週次消費量テーブル:

食材名 | W1消費量 | W2消費量 | W3消費量 | W4消費量 | 月平均 | 週次平均
豚バラ | 2.5kg   | 3.0kg   | 2.8kg   | 3.2kg   | 11.5kg | 2.875kg

週次平均消費量:

=AVERAGE(B2:E2)

来週の発注量(安全在庫1.2倍):

=F2 * 1.2

テンプレート5:月次経営ダッシュボード

上記4つのシートを連携させた「経営ダッシュボード」を作成します。このシートを見るだけで店の健全性が一目でわかります。

ダッシュボードに表示する主要KPI

=====月次経営ダッシュボード 2026年5月=====

【売上】
今月売上合計: =日次売上シート!月計セル
先月比: =今月/先月-1
月間目標達成率: =今月/目標

【原価管理】
今月の食材原価合計: =原価シート!集計セル
今月の原価率: =食材原価/売上

【人件費】
今月の人件費合計: =シフトシート!合計セル
今月の人件費率: =人件費/売上

【利益】
粗利: =売上-(食材原価+人件費)
粗利率: =粗利/売上

スパークラインで推移を可視化

Excelの「スパークライン」機能を使うと、セル内に小さなグラフを表示できます。

  1. 推移を見たいセルの隣のセルを選択
  2. 挿入 → スパークライン → 折れ線
  3. データ範囲に過去12ヶ月のデータを指定

Excel管理を続けるための3つの習慣

習慣1:毎日閉店後5分で日次データを入力

売上データは当日中に入力することが鉄則です。翌日以降になると記憶が曖昧になり、レジのレシートを探す手間も増えます。

習慣2:週に一度、原価率と在庫をチェック

月末にまとめてやろうとすると必ず破綻します。週次で15分のチェックタイムを設けることで、問題を早期発見できます。

習慣3:月初めに先月の数字を振り返る

毎月第1営業日に前月のダッシュボードを確認し、「何が良くて何が悪かったか」を10分で振り返ります。この振り返りがあってこそ、数値管理が経営改善に繋がります。


Google スプレッドシートを使う場合の追加メリット

ExcelではなくGoogle スプレッドシートを使う場合、以下の追加機能が活用できます。

  • スマートフォンからリアルタイム入力 — ホールスタッフがタブレットから売上データを入力
  • 複数人同時編集 — 複数店舗の場合も同一シートをリアルタイム共有
  • Google フォーム連携 — スタッフがシフト希望をフォームで送信、自動でシートに反映
  • Google Apps Script — 定型のレポートを自動生成してオーナーにメール送信

まとめ:Excelは「経営の羅針盤」になる

本記事で紹介した4つのテンプレートをExcelで構築することで:

  • 日次売上管理 → 売上の波が見えて、戦略的な販促ができる
  • 原価率管理 → 利益を削っているメニューが特定できる
  • シフト管理 → 人件費率の適正化で毎月数万円の改善ができる
  • 食材発注管理 → 廃棄ロスが減り、原価率が下がる

これら全てをExcelで管理することは、3日もあれば構築できます。コストはゼロ。必要なのは「始める決断」だけです。

今月から数値管理を始めれば、来月には自分の店の「問題の本質」が見えてきます。それがExcel経営管理の最大の価値です。

飲食店の売上・原価・人件費をまとめて管理できるようになったら、次は帳簿や確定申告もデジタル化しましょう。freee会計 なら銀行口座・クレジットカードと連携して日々の取引を自動記録。飲食店オーナーの確定申告・青色申告の作業時間を大幅に短縮できます。


本記事で紹介した数式はMicrosoft Excel 2019以降およびGoogle スプレッドシートで動作確認しています。バージョンにより一部の数式の動作が異なる場合があります。


関連ツール

長さ・重さ・温度を即座に変換 → 単位変換ツール

月収から理想の支出配分を計算 → 家計簿シミュレーター 副業の税金を計算 → 副業税金計算シミュレーター 借金の返済計画を立てる → 借金返済シミュレーター


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